バベルの塔に登りたい
普段職場に行く途中や帰る途中にコンビニに立ち寄ることがあるのだが、そこでカッコいいポスターを発見した。
ポスターの中心には
燃えるような赤いレンガと、無数の緻密に描かれた作業している人々、まるで崩壊したような建設中のバベルの塔の絵が異彩を放っていた。
一瞬で目がそこに釘付けになった。
瞬時に理解した。
私はこれを見なければならない。
私は、これまでボスやブリューゲルなど全く知らないし、ましてや教会やキリスト教的な思想の芸術は大嫌いであった。
現地に着くと、閉館1時間前なのに多くの人がいて、じっとひとつひとつの作品に目を凝らしている。初めの方にはボスの作品が飾られている。赤、そして、白色がとても映えた描き方をしている。
版画は、本当に細部まで丁寧に、奇妙な光景を描き出している。ほんの一部だけみていても飽きないくらいだ。
何か想いが描かれているのだろうと、丁寧に人物の歴史や年表、芸術の流行などの記載をじっくり時間をかけて読んだ。
多くの興味深い考え方に触れることができた。
宗教を芸術の題材にしてきた時代から、題材を人々の生活に移していったこと
人々の生活を大きく描き、小さく宗教的な要素を織り交ぜたり、象徴であるモチーフ、例えば熊や梟、人の中に居酒屋、数多くのモンスターなど、を入れることで暗示的な作品にすること
写実からすこし離れて、より現実をリアルに表すために多少なりデフォルメを効かし、リアルさを追求したこと
まるで動きそうなくらい、奇妙なくらいに、リアルに感じた。多分プロジェクトマッピングでこれを弄っていったらすごい面白いのがつくれるかも。
人の列を避けながら歩くと、突如ブリューゲルのコーナーが始まる。大きな壁に、バベルの塔の一部が描かれている。
突き進んでいくと多くの人だかりが見えた。
やはり最後にはバベルの塔が展示されていた。
ブリューゲルのバベルの塔からは、旧約聖書で描かれた、違う言語で混乱し、終いには散り散りにさせられた人間を、スケールのでかい塔の建設のなかで描くことにより、人間の可能性を鮮明に示していることがハッキリと読み取れた。
赤く、白く、崩れそうなバベルの塔と、そこで懸命に生きた人間と、人間を惑わし導こうとする神々
これまで宗教的な作品が苦手だった私が、意外にも心惹かれた理由は、ここにあるのかもしれない。